結木礼のちょっと怖い話

結木礼(ゆうき・れい)ライター・編集者。怖い話を中心に、ゆかいな話、おもしろい話など、ゆるゆると書いていきます。お問い合わせは下記URLからお願いします。 https://www.yuki-rei.com/otoiawase

著書発売のお知らせ

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著書『戦慄疾走の3分ストーリー 気づかなければよかった恐ろしい話』が2019年6月24日、東京書店より発売されました。

「あとで気づくと…」「意味がわかれば…」系の恐ろしい話を完全書き下ろしで70話以上掲載しています。

各話には、かわいくも恐ろしい影絵による解説も用意しました。

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「悲劇の章」「悪意の章」「呪いの章」「絶望の章」と、章が進むごとに移り変わる影絵の展開にも注目。

amazon等、ネット書店でもご購入いただけますので、ぜひご覧ください。

↓amazon販売ページへのリンクはこちら。

気づかなければよかった 恐ろしい話 (戦慄疾走の3分ストーリー)

「ちょっと怖い話」を動画にしました

当ブログに掲載している「ちょっと怖い話」を、いくつか動画にしてYouTubeにアップしました。

【恐ろしいトイレ】

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【ハリガネムシ】

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 【呪いの声】

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 どの動画も、カップラーメンを作るくらいの時間でさっくり見られるように編集していますので、ぜひチェックしてみてください。

 

 

ハリガネムシ

夏休み、どこかに連れて行けとうるさい息子のリクエストにこたえて、渓谷にやってきた。
河原で火を起こして、家族そろってバーベキュー。
自然のなかで食事をするのは、やっぱりいいものだ。
息子も妻も、うれしそうに笑っている。

すっかり満腹になり、腹ごなしに河原を散策していたら、息子が「パパ! こんなところにカマキリがいる!」と叫んだ。
見ると、水辺でカマキリがふらふらしている。

「変なカマキリだな…」と思った次の瞬間、私は悲鳴をあげた。
カマキリのお尻から、気味の悪い虫がにょろりと這い出してきたからだ。

「パパ! なにこれ?」と息子が私の服を引っ張った。
スマホで検索すると、どうやらハリガネムシという寄生虫らしい。

文字通り、ハリガネみたいに細い姿のそれは、体をくねらせながら水の中に消えていった。
息子にせがまれ、さらにスマホで調べてみたところ、この寄生虫は恐ろしい能力を持っていることがわかった。

ハリガネムシはカマキリなどの昆虫に寄生すると、宿主の脳を操って、水辺へといざなうという。
特殊なタンパク質を宿主の脳に注入することで、「水辺に行きたい、水辺に行きたい」と思わせるそうだ。
水に落ちた宿主は、当然、魚に食べられてしまうが、ハリガネムシはその前に脱出して、川のなかで繁殖活動をおこなう。

昆虫好きには割と知られた話らしく、カマキリのお尻を水につけて、ハリガネムシが這い出してくる様子を観察した動画まである。
この動画に、息子が食いついた。

「ぼくもやってみる!」と息子が草むらに駆けていった。
なんだか嫌な予感がしたが、数十分後、息子はスーパーの袋にカマキリをいっぱい捕まえて戻って来た。
やれやれ、やっぱり男の子だなぁ…と私は苦笑した。

息子は袋の中からカマキリを1匹つまみあげ、動画と同じように、そのお尻を水につけた。
「必ず寄生されているわけじゃないよ」と私が言い終わる前に、カマキリのお尻からにょろりとハリガネムシが這い出してきた。

おどろいた。
なんと半数以上のカマキリから、ハリガネムシがあらわれたのだ。
なかには2匹、3匹のハリガネムシに取りつかれていたカマキリもいた。

息子は取り出したハリガネムシを、手のひらの上で、うにょうにょ這わせている。
虫が苦手な私は、「ほどほどにしておけよ」と言い残し、妻のもとに退散した。

夕暮れ、ずっとハリガネムシをいじっていた息子に声をかけ、帰路についた。
よっぽど楽しかったのだろう。

帰りの車内でも、息子はずっと「水辺に行きたい、水辺に行きたい」と繰り返している。

モニター付きインターホン

我が家のインターホンには、モニターが付いている。
だれがインターホンを押したか、リビングからカメラ越しにチェックできるんだ。

なにかのセールスだったら、わざわざ応対せずに、無視してしまうことも多い。
女の一人暮らしには、なかなか便利なアイテムだ。

ついさっきも、「ピンポーン♪」とチャイムが聞こえたから、モニターをチェックした。
画面には、髪の長い女が映っている。
白いワンピースをだらりとまとい、おっくうそうに、しかし何度も呼び鈴を押している。

不審者かもしれない…。


「ピンポーン♪」「ピンポーン♪」「ピンポーン♪」
鳴り響くチャイムを無視していると、何分か後に、ようやく静かになった。

恐る恐る、インターホンのモニターを見た。

よかった…。
画面に人影はなく、玄関先が映っているだけ。

ちょっと怖い思いをした私は、念のため、玄関にドアチェーンをかけておくことにした。
リビングから玄関に走り、ドアチェーンに手を伸ばしたとき、私は気づいてしまった。

ドアにカギがかかっていないことを。

呪いの正体

君は、呪いなんて非科学的なものを、まだ信じているのかい?
私は呪いの正体を、科学的に解明することに成功した。

それは神秘的でも、超自然的でもない、極めて現実的な現象だったんだ。
たとえば、だれかにひどい仕打ちをした人が、呪い殺された……なんて怪談がある。

種明かしをしよう。

ひどい仕打ちをするような人は、だれかに恨まれていることを自覚しているものだ。
どこかでだれかが、自分が不幸になることを願っているんじゃないか……、いつか復讐しようと思っているんじゃないか……。

そんなことを考えていると、心身が不調になって当然だ。
ストレスは万病の元だからね。
いずれ病気になって、死んでしまう人がいても不思議ではない。
それを人は、呪いだと解釈するんだ。

呪いに似た「たたり」も同じだ。
神でも悪魔でもいいが、いかにも「たたられそう」なことをしてしまった。
それを気に病むことで、いろいろな症状が精神や肉体にあらわれるんだ。

呪いの話に戻ろうか。
人にひどい仕打ちをしても、なんとも思わなければ、その人は呪われないかもしれない。

でもね、人間にはだれにだって、良心というものがある。
自分には良心なんてない……と思っているような人でも、だれかにひどいことをすると、胸の奥のほうがチクチクするんだ。
だから良心が痛むようなことは、やらないのが一番だね。

とはいえ、知らず知らずに人を傷つけたり、過ちをおかしたりすることは、だれにでもあることだ。
君にも、一つや二つは、覚えがあるだろう?
でも、ひどいことをした……とか、だれかに恨まれているかも……といったことを、あまり考えすぎないほうがいい。

呪われてしまうからね。

【閲覧注意】サシ

筆者が体験した気持ちの悪い話。
虫が苦手な人は、読まないでください。

小学生のころ、釣りが好きで、よく近所の川で竿を振っていた。
エサは釣具店で買ったミミズ。
丸い容器に、ミミズがぎっしり入って、たしか200円だった。

ミミズのエサはよく釣れたが、小学生の財力で毎回200円はキツい。
あるとき、ミミズを買いに釣具店にいくと、別のエサが目についた。

5、6センチ四方くらいの透明パックのなかに、小さな幼虫のようなものが、たくさん入っている。
お店の人に「これはなんですか?」と聞くと、「サシという釣りエサだよ」という

値段は2パックで100円。
ミミズより安いという理由だけで、その日はサシを買った。

2パックのうち、とりあえず1パックを開けて、釣り針に刺してみた。
米粒ほどの幼虫なので、ミミズよりは抵抗がない。

でも、釣果は全然だった。
ボウズ、つまり一匹も釣れずに家路につくハメになり、もう1パックは開ける機会もなかった。
あまったほうのパックは、道具箱に入れたままにしておいた。

何日かして、もう一度サシを試してみようと、川に出かけた。
釣り場につき、道具箱を開けると、ブブ…ブ……と、気味の悪い音がかすかに聞こえた。

透明パックのなかに、ギンバエがぎゅうぎゅう詰めになって、うごめいていた。

そのとき、サシが蛆虫だということを知った。
ギンバエの詰まったパックをどう処理したかは、ここでは書きたくない。

ライバル

高校受験を間近に控え、私は連日、ふらふらになるまで勉強をしていた。
この苦しみがわかるのは、同じ難関校を受験するヒナちゃんだけだ。

ヒナちゃんは親友だけど、ライバルでもある。
成績も似たり寄ったりで、どちらも合格するかどうか、五分五分といったところ。
私はできれば、ヒナちゃんと一緒に入学式に出席したい。
ヒナちゃんも、同じ気持ちなら嬉しいな。

ヒナちゃんのがんばりは、顔色を見ればわかる。
いつも青白い顔で、睡眠不足なのだろう。
きっと私も、同じような顔をしているはずだ。

私たちは学校で顔を合わせるたびに、「勉強している?」「もう大変で、死にそうだよ」なんて会話を交わしている。
試験を翌日に控えた朝も、「こんなことをしていると、マジで死ぬよ。もう無理〜」 「ははは……、私も〜」と力なく笑い合った。

でも、徹夜の日々も今日で最後だ。
ヒナちゃんは私に、「夜、つらくなったら飲んでね」と栄養ドリンクを差し入れてくれた。
私もお返しに、「夜、寒くなったら使ってね」と使い捨てカイロをあげた。

その夜、スマホが「ピロン♪」と鳴った。
ヒナちゃんからのメッセージだ。
おーい、生きている?」 なんて書いてある。

時計を見ると、午前2時。
ヒナちゃんもがんばるなぁ。
私は「うん、まだまだ生きているよ!」と返信した。

またスマホが、「ピロン♪」と鳴った。
「あれ? 栄養ドリンクをまだ飲んでいないの?」とヒナちゃん。

栄養ドリンクは飲まずに捨てた。

トイレのいたずら

昼間から発泡酒をひっかけ、近所の家電量販店へ。
エアコンの効いた店内で、マッサージチェアに座って一眠りするのが、オレにとって最高の休日だった。

だが1ヵ月ほど前、いつものようにマッサージチェアでグースカ寝ていたオレは、店のスタッフにゆすり起こされた。
そいつは「ほかのお客様のご迷惑になります」と、すました顔で言い放った。
生意気にも、胸に「店長」なんて名札をつけてやがる。

ふん、ほかに客なんて一人もいないクセに。
オレはそいつを軽くにらみつけ、ひとまずその場を立ち去った。

次の日から、俺はマッサージチェアではなく、その店のトイレに直行するようになった。
トイレに特大の爆弾を落としてやり、水を流さずに立ち去る。
これが、オレの考えた復讐だった。

何度も続けていると、ある日、トイレに「いたずらはやめてください」という注意書きが貼られるようになった。
ふん、オレはいたずらなんてしていない。
いつも「水を流し忘れている」だけだ。

かまわずに爆弾を落とし続けていると、何日か後にトイレの注意書きが「見ているぞ!」というポスターに変わった。
店長らしき人物が、人差し指をこちらに向けて叫んでいるイラストが描かれている。
ふふ…、あの店長がわざわざこれを描いたかと思うと、笑えてくる。

せっかくだから、もっと面白くしてやろう。
オレはポスターをとめている画びょうをいくつか外した。
この画びょうをイラストの目に突き刺せば、「目を光らせている」というポスターのテーマにぴったりだ。

画びょうを刺そうとして、俺は気づいた。
イラストの黒目の部分が、くり抜かれていることに。

その奥から、本物の目玉がぎょろりと覗いていた。