結木礼のちょっと怖い話

結木礼(ゆうき・れい)ライター・編集者。怖い話を中心に、ゆかいな話、おもしろい話など、ゆるゆると書いていきます。お問い合わせは下記URLからお願いします。 https://www.yuki-rei.com/otoiawase

著書発売のお知らせ

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著書『戦慄疾走の3分ストーリー 気づかなければよかった恐ろしい話』が2019年6月24日、東京書店より発売されました。

「あとで気づくと…」「意味がわかれば…」系の恐ろしい話を完全書き下ろしで70話以上掲載しています。

各話には、かわいくも恐ろしい影絵による解説も用意しました。

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「悲劇の章」「悪意の章」「呪いの章」「絶望の章」と、章が進むごとに移り変わる影絵の展開にも注目。

amazon等、ネット書店でもご購入いただけますので、ぜひご覧ください。

↓amazon販売ページへのリンクはこちら。

気づかなければよかった 恐ろしい話 (戦慄疾走の3分ストーリー)

落とし穴

「ガキのころにさ、落とし穴をつくったのを覚えているか?」

「落とし穴…?」

「ほら、裏山にでっかいのを掘っただろ?」

「ああ、思い出した! まだ小学生のときだったかな?」

「そう。夏休みにヒマを持てあまして、大人が余裕で入るくらい深い穴を掘ったんだよ」

「でも裏山はめったに人が来ないから、だれも引っかからなかったよね」

「いま思えば、バカなことをしたよ」

「ははは。でも、なんで今ごろ、そんな話をするんだ?」

「なんとなく気になったからさ、この前、裏山に見に行ったんだ」

「へえー、どうだった?」

「まだ穴はあったよ」

「そうか、確か掘ったままにしておいたんだっけ…」

「あのさ…、このまま放っておくと危険だから埋めに行かないか?」

「えー、あんなに大きな穴を埋めるのは、けっこう大変だぜ」

「大丈夫。掘ったときより、土は少なくていいから」

モニター付きインターホン

我が家のインターホンには、モニターが付いている。
だれがインターホンを押したか、リビングからカメラ越しにチェックできるんだ。

なにかのセールスだったら、わざわざ応対せずに、無視してしまうことも多い。
女の一人暮らしには、なかなか便利なアイテムだ。

ついさっきも、「ピンポーン♪」とチャイムが聞こえたから、モニターをチェックした。
画面には、髪の長い女が映っている。
白いワンピースをだらりとまとい、おっくうそうに、しかし何度も呼び鈴を押している。

不審者かもしれない…。


「ピンポーン♪」「ピンポーン♪」「ピンポーン♪」
鳴り響くチャイムを無視していると、何分か後に、ようやく静かになった。

恐る恐る、インターホンのモニターを見た。

よかった…。
画面に人影はなく、玄関先が映っているだけ。

ちょっと怖い思いをした私は、念のため、玄関にドアチェーンをかけておくことにした。
リビングから玄関に走り、ドアチェーンに手を伸ばしたとき、私は気づいてしまった。

ドアにカギがかかっていないことを。

霊感

人から注目を集めたいのか、それとも単なる中2病なのかはわからないけれど、クラスに1人くらいは、「自分には霊感がある」と言い張る子がいるものだ。
「あそこに幽霊がいるとか」とか、「あなたの守護霊が見える」とか、真顔で変なことを言うタイプ。
最初はみんな怖がるんだけど、だんだん「いつものやつだ」みたいな感じで、相手にしなくなる。

最近、ぼくと友達になったミサキちゃんも、そんな子らしい。
公園のベンチでなんとなく隣り合ったんだけど、初対面のぼくに「あなた、霊を信じる?」なんて聞いてきた。
変な子だなぁ…と思ったけど、ぼくも一人ぼっちだったし、話し相手がほしかった。

それ以来、ぼくはミサキちゃんとよく話をするようになった。
会うのは決まって、このベンチだ。

ミサキちゃんの話は、正直なところ、どれもウソっぽい感じがする。
話が大げさというか、盛りすぎちゃってるんだよね。

でも、そう言うぼくは、ミサキちゃんの霊感を信じている。
だって、ぼくの姿が見えているんだから。

呪いの正体

君は、呪いなんて非科学的なものを、まだ信じているのかい?
私は呪いの正体を、科学的に解明することに成功した。

それは神秘的でも、超自然的でもない、極めて現実的な現象だったんだ。
たとえば、だれかにひどい仕打ちをした人が、呪い殺された……なんて怪談がある。

種明かしをしよう。

ひどい仕打ちをするような人は、だれかに恨まれていることを自覚しているものだ。
どこかでだれかが、自分が不幸になることを願っているんじゃないか……、いつか復讐しようと思っているんじゃないか……。

そんなことを考えていると、心身が不調になって当然だ。
ストレスは万病の元だからね。
いずれ病気になって、死んでしまう人がいても不思議ではない。
それを人は、呪いだと解釈するんだ。

呪いに似た「たたり」も同じだ。
神でも悪魔でもいいが、いかにも「たたられそう」なことをしてしまった。
それを気に病むことで、いろいろな症状が精神や肉体にあらわれるんだ。

呪いの話に戻ろうか。
人にひどい仕打ちをしても、なんとも思わなければ、その人は呪われないかもしれない。

でもね、人間にはだれにだって、良心というものがある。
自分には良心なんてない……と思っているような人でも、だれかにひどいことをすると、胸の奥のほうがチクチクするんだ。
だから良心が痛むようなことは、やらないのが一番だね。

とはいえ、知らず知らずに人を傷つけたり、過ちをおかしたりすることは、だれにでもあることだ。
君にも、一つや二つは、覚えがあるだろう?
でも、ひどいことをした……とか、だれかに恨まれているかも……といったことを、あまり考えすぎないほうがいい。

呪われてしまうからね。

【閲覧注意】サシ

筆者が体験した気持ちの悪い話。
虫が苦手な人は、読まないでください。

小学生のころ、釣りが好きで、よく近所の川で竿を振っていた。
エサは釣具店で買ったミミズ。
丸い容器に、ミミズがぎっしり入って、たしか200円だった。

ミミズのエサはよく釣れたが、小学生の財力で毎回200円はキツい。
あるとき、ミミズを買いに釣具店にいくと、別のエサが目についた。

5、6センチ四方くらいの透明パックのなかに、小さな幼虫のようなものが、たくさん入っている。
お店の人に「これはなんですか?」と聞くと、「サシという釣りエサだよ」という

値段は2パックで100円。
ミミズより安いという理由だけで、その日はサシを買った。

2パックのうち、とりあえず1パックを開けて、釣り針に刺してみた。
米粒ほどの幼虫なので、ミミズよりは抵抗がない。

でも、釣果は全然だった。
ボウズ、つまり一匹も釣れずに家路につくハメになり、もう1パックは開ける機会もなかった。
あまったほうのパックは、道具箱に入れたままにしておいた。

何日かして、もう一度サシを試してみようと、川に出かけた。
釣り場につき、道具箱を開けると、ブブ…ブ……と、気味の悪い音がかすかに聞こえた。

透明パックのなかに、ギンバエがぎゅうぎゅう詰めになって、うごめいていた。

そのとき、サシが蛆虫だということを知った。
ギンバエの詰まったパックをどう処理したかは、ここでは書きたくない。

ライバル

高校受験を間近に控え、私は連日、ふらふらになるまで勉強をしていた。
この苦しみがわかるのは、同じ難関校を受験するヒナちゃんだけだ。

ヒナちゃんは親友だけど、ライバルでもある。
成績も似たり寄ったりで、どちらも合格するかどうか、五分五分といったところ。
私はできれば、ヒナちゃんと一緒に入学式に出席したい。
ヒナちゃんも、同じ気持ちなら嬉しいな。

ヒナちゃんのがんばりは、顔色を見ればわかる。
いつも青白い顔で、睡眠不足なのだろう。
きっと私も、同じような顔をしているはずだ。

私たちは学校で顔を合わせるたびに、「勉強している?」「もう大変で、死にそうだよ」なんて会話を交わしている。
試験を翌日に控えた朝も、「こんなことをしていると、マジで死ぬよ。もう無理〜」 「ははは……、私も〜」と力なく笑い合った。

でも、徹夜の日々も今日で最後だ。
ヒナちゃんは私に、「夜、つらくなったら飲んでね」と栄養ドリンクを差し入れてくれた。
私もお返しに、「夜、寒くなったら使ってね」と使い捨てカイロをあげた。

その夜、スマホが「ピロン♪」と鳴った。
ヒナちゃんからのメッセージだ。
おーい、生きている?」 なんて書いてある。

時計を見ると、午前2時。
ヒナちゃんもがんばるなぁ。
私は「うん、まだまだ生きているよ!」と返信した。

またスマホが、「ピロン♪」と鳴った。
「あれ? 栄養ドリンクをまだ飲んでいないの?」とヒナちゃん。

栄養ドリンクは飲まずに捨てた。

トイレのいたずら

昼間から発泡酒をひっかけ、近所の家電量販店へ。
エアコンの効いた店内で、マッサージチェアに座って一眠りするのが、オレにとって最高の休日だった。

だが1ヵ月ほど前、いつものようにマッサージチェアでグースカ寝ていたオレは、店のスタッフにゆすり起こされた。
そいつは「ほかのお客様のご迷惑になります」と、すました顔で言い放った。
生意気にも、胸に「店長」なんて名札をつけてやがる。

ふん、ほかに客なんて一人もいないクセに。
オレはそいつを軽くにらみつけ、ひとまずその場を立ち去った。

次の日から、俺はマッサージチェアではなく、その店のトイレに直行するようになった。
トイレに特大の爆弾を落としてやり、水を流さずに立ち去る。
これが、オレの考えた復讐だった。

何度も続けていると、ある日、トイレに「いたずらはやめてください」という注意書きが貼られるようになった。
ふん、オレはいたずらなんてしていない。
いつも「水を流し忘れている」だけだ。

かまわずに爆弾を落とし続けていると、何日か後にトイレの注意書きが「見ているぞ!」というポスターに変わった。
店長らしき人物が、人差し指をこちらに向けて叫んでいるイラストが描かれている。
ふふ…、あの店長がわざわざこれを描いたかと思うと、笑えてくる。

せっかくだから、もっと面白くしてやろう。
オレはポスターをとめている画びょうをいくつか外した。
この画びょうをイラストの目に突き刺せば、「目を光らせている」というポスターのテーマにぴったりだ。

画びょうを刺そうとして、俺は気づいた。
イラストの黒目の部分が、くり抜かれていることに。

その奥から、本物の目玉がぎょろりと覗いていた。